「 恋する神々とシューベルト 2                    ・ 幕 間 狂 言 」  インテルメッツォ・パート2     

ナレーター「本日はお忙しい中をわざわざお運び頂きまして、厚くお礼申し上げます。これから早速『シューベルトのギリシャ神話シリーズ』を始めさせて頂きましょう。巻頭というか劈頭を飾る歌と致しまして、先ずは『竪琴に寄せて』を聞いて頂きます。これは、シューベルト研究家のアインシュタインが、『シューベルトの全作品の座右の銘にしてもいい』、と評した歌で、元の詩は古代ギリシャの詩人・アナクレオンです。大意は『英雄たちの歌を高らかに歌いたいのに、私の竪琴はどうしても恋の歌ばかりを奏でてしまう』、というもので、これこそまさにかれシューベルトの人格ばかりか、その音楽の本質を如実に物語るひとことだ、と言ってもいいでしょう。では、聞いて頂きましょう」。

  「 竪 琴 に 寄 せ て 」 ( D 7 3 7 )

 「アトレウスの子らを、あのカドモスを歌おう!
  けれど私の琴のしらべは、いつもかわりなく、ただ恋を奏でるばかり。
  糸を張り替え、琴も新しく、ヘラクレスの勝利を、高らかに歌おう!
  糸を変えても、恋のしらべを、私の琴は、ただ恋を奏でるばかり。
さよなら、英雄たち!ああ、私の琴は、戦さを忘れて、ただ恋を歌うのだから。
さよなら、英雄たち!ああ、私の琴は、戦さを忘れて、ただ恋を歌うのだから。」。                                       
ナレーター「耳の敏感な方はお気つ”きになったと思いますが、”さよなら、英雄たち”という所で、伴奏はベートーベンの有名なピアノソナタのメロデイーを奏でています。さて、次にお聞き頂くのは、『姿を変える恋人』という歌で、作詩はゲーテです。今のコトバで言えば“ヘンシン”ですが、ギリシャの神さまたちは、そろいもそろってこの“ヘンシン”が大好きで、動物・植物・鉱物、森羅万象(神社仏閣)、どんなものにでも化けることが出来ました。これは男の神さまの歌ですが、もっとずっと古い時代には、女神が姿を変える恋人を捕らえるまでのプロセスが主題になっていました。追っかけるのは男ではなくて女だったのです。捕まった後の運命はどうなったのか?それはこれから神話の正体を詳しくお聞きになってからのお楽しみ、ということにして、歌を聞いて頂きましょう」。

  「 姿 を 変 え る 恋 人 」 ( D 5 5 8 )
 「魚になって、元気になり、釣りに来れば、餌になろう。
  魚になって、元気になろう、魚になる、元気になろう。
  黄金になって、君のもの、買いたいものは、なんでも買おう。
  黄金になって、君の自由、黄金になる、君の自由。
  ぼくはぼくだ、このままで、むしりたい所をむしれ!
  ぼくはぼくだ、このままだよ、ぼくはぼくだ、このままだよ!」。

ナレーター「ではいよいよ本日のメインエベントとしまして、『オリンポスの黄昏・幕間狂言』をお楽しみ頂きたいと存じます。名高いギリシャの代表的な女神たちを五人、それに東洋を代表する三人の女神たちを、ここへ一度に集めて活発なシンポジウムを展開して頂くことに致します。名付けて“夜まで生ま討論”、ごゆっくりご観覧ください」。  。
   

・ 「 オ イ デ ィ プ ス の 神 話 」

ナレーション(アテーナー)「シューベルトはたった一曲しか歌を残していませんが、テーバイの王さま・オイディプスについて一般に知られているのは、次のような物語です 。
テーバイの国王・ライオスは、后のイオカステーと結婚して何年にもなるのに、どうしても子供に恵まれませんでした。そこでデルポイのアポロンの巫女たちに“神託(神さまのお告げ)”を求めたところ、“あなた方に子供が生まれないのは、かえってよいことです。なぜならあなた方の間に生まれる最初の王子は、国王を殺して后を妻にする宿命を背負っているからです”、と言われました。ライオスはこれを聞くと、その後はイオカステーと交わることを避けました。何も理由を聞かされなかったイオカステーは大層悲しみ、ある晩かれに酒を飲ませて、眠っているスキに抱き締めました。九か月の後に生まれた赤ん坊は、ライオスが家来に命じて両脚にクギを刺して砂漠の真ん中に捨てさせました。そこへ羊飼いがやって来て、泣いている赤ん坊をひろって“オイディプス =腫れた脚”と名付けて育てました。成長したかれは友人たちから“おまえは両親に全然似ていない”と言われるので、デルポイまで出掛けて行き、アポロンの巫女たちに相談すると、“それは当然で、おまえは父親を殺して母親と結婚するという宿命を背負っているのだ”、と告げられました。かれは両親に迷惑をかけないように、そっと家を抜け出して放浪の旅に出ましたが、山間の狭い道にさしかかった所で、偶然実の父親のライオスが馬車に乗って来るのに出会い、御者が槍を構えて“道を譲れ”と迫って来るので、仕方なく御者の槍を奪って突き殺し、刀で切り掛かって来るライオスも馬車に引き摺らせて殺してしまいます。その後テーバイの都までやって来ると、そこの人々は、“スフィンクス”という怪物が町外れの岩の上にいて、通る人間に謎をかけて答えられないと片っ端から殺してしまうのだ、というハナシをしました。かれはスフィンクスのいる所へ言って、その謎を解いて見せたので、スフィンクスは岩から転げ落ちて死んでしまいました。テーバイの住民たちは大喜びで、かれを死んだ国王の跡継ぎにしよう、と提案し、何も知らぬオイディプスは、未亡人になっていた母親のイオカステーと結婚して王位につきました。しばらくするとテーバイの町には疫病と飢饉が流行ったので、国王のオイディプスは、再びデルポイの神託を求めると、“前の王さま・ライオスを殺した犯人を追放すれば収まる”、と告げられました。その頃のうわさで、この私が水浴びしている全裸の姿を見たので、その罰として盲人にされてしまったテイレシアスという男がいて、予知能力があるという評判でした。かれがテーバイへやって来た時に、オイディプスは意見を求めました。すると、“前の国王を殺した犯人は、父親を殺し、母親を妻にするという宿命を背負った男です”、とテイレシアスが言いました。“一体それは誰のことだ?”、とオイディプスが尋ねると、テイレシアスは悲しい顔で“王さま、それは実はあなた自身のことです”、と言いました。はじめは誰もかれの言うことを信じませんでしたが、いろいろな証人たちが次々と現れて、オイディプスがライオスに捨てられた子であること、山道で知らずに父親を殺してしまったことが明らかになったので、イオカステーは自殺し、オイディプスはみずから両眼を潰して盲目となり、一人娘の王女・アンティゴネーを連れて、永い放浪の旅に出ました」。
Y・C・M「20世紀の“精神分析”の創始者といわれるS・フロイドは、この神話を『男の子は誰でも、父親を殺して母親を自分のものにしたい、という潜在的な願望をもっている』、という理論の根拠としました。いわゆる“マザコン”というのは、ここから来ています。しかし、これについてはランケ・グレイブスという学者が痛烈に批判していて、『女神を崇拝していた先住民たちの制度では、新しい王さまは、たとえよそものであっても、理論的にはかれが殺害した前の国王の息子だ、ということになっていた。この習慣を、家父長制の侵略者たちが“父親殺し”や“近親相姦”として誤り伝えたのである。エディプス・コンプレックスを、すべての男性に共通の本能だとするフロイドの理論は、この誤り伝えられた物語をヒントにしたものである。プルタルコスは、カバが父カバを殺して母カバをレイプしたことを記録しているが、かれは“すべての男性がカバ・コンプレックスをもっている”、などとは絶対に言おうとはしなかった』、と言っています。この女神たちを絶対の権威として崇めていた“母権制”の社会では、実際の権力は女王がもっていて、国王というのは一定の統治期間を終えると、後継者の手で殺されるのが当たり前で、“父親殺し”はいわば制度化されていたわけです。この数千年にわたる慣習を廃止して、父親の系統で王位を継承する制度を打ち立てようとした、いわば“家父長制の先覚者”がこのオイディプスだった。これがこの神話の正体であり、歴史の真相だった、ということになります。これはこの列島でも同じことで、たとえば 聖徳太子は、大陸から渡って来て“推古女帝”と結婚することによって、はじめてこの “大和政権”の王座を自分のものにすることができたし、古代の“女帝”というのはすべて、エーゲ海に母権制の確立していた時代の女神たちと、よく似た権威だったのでしょう。ヤマタイ国の女王ヒミコも同じです」。
アテーナー「それでは歌を聞いていただきましょう。忌まわしい事実が明らかになって苦しむ父親・オイディプスをなんとか慰めようと、必死で神々に祈りを捧げる娘のアンティゴネと、両眼を潰して二度と太陽の光を見ることができなくなった、と嘆くオイディプスの歌で、最後に悪霊の宣告を下す声が響いて終ります」。
 
 「 ア ン テ ィ ゴ ネ と オ イ デ ィ プ ス 」 ( D 5 4 2 )

 

「 エ リ ー ニ ュ ス ( 復 讐 の 女 神 ) た ち 」

ナレーション(アテーナー)「今度は“父親殺し”の反対、“母親殺し”のおハナシをしましょう。有名なトロイア侵略戦争のギリシャ軍の総大将だったアガメムノンは、トロイアを滅ぼして国王のプリアモスをはじめ王族の男は皆殺しにしますが、王女のカサンドラは部下たちの慰みものにしてから、自分専用の奴隷として故郷のミュケーナイに凱旋しました。ところが故郷へ帰り着いたその日に、妻のクリュタイムネーストラとその愛人・アイギストスは、共謀してアガメムノンを殺し、ついでにカサンドラの命まで奪って政権を奪い取ってしまいます。これを伝え聞いた長男のオレステスは、“父の敵だ!”と言って実の母親を愛人もろとも刺し殺してしまいました。“母殺し”という大罪を犯してしまったかれは、国を追われて放浪の旅に出ますが、復讐の女神・エリーニュスたちに追われて気が狂い、地の果てまで逃げた末に、最後は私を守護神として崇めるアテーナイへやって来て、私の神殿に救いを求めました。裁判が開かれて、復讐の女神たちが検察官の役を、アポロンが弁護人の役、そしてこの私が裁判官をつとめることになりました。結果は陪審員の票決が“有罪無罪同数”だったので、私がかれに無罪を宣告した、という言い伝えになっています。エリーニュスたちは『正義がねじ曲げられた』、と言って不平をならべましたが、私がかの女たちを慰めて、『今後はこのアテーナイにあなた方の神殿を建てて、私以上の崇拝を捧げるようにするから』と言ったので、ようやく怒りを抑えてくれた、と言われています」。
Y・C・M「実はこれはアイスキュロスという“ギリシャ悲劇の巨匠”が創作したウソの物語で、国王は統治期間を終えると後継者の手で命を奪われる、という母権制時代の慣習が理解できなくなっていた後世の人たちが勝手に、“母殺しによって父の敵を討ったオレステス”、というおハナシにしてしまったのです。実はこの『復讐の女神・エリーニュス』とは、ゼウスやアポロンなど侵略者たちの信奉する神さまによって、凌辱され、神殿を破壊され、その上ムリヤリに“ゼウスのお后”にされてしまった、ここにいるヘラさんとその巫女たちの怨念をこそ雄弁に物語る象徴である、と言っていいでしょう。かの女たちがオレステスをなじるコトバは、まさに非道な夫のゼウスとその仲間の男の神さまたちに向けられたものだ、と言うことができます。本来これは“コロス”と呼ばれる合唱隊の歌う部分ですが、シューベルトの作品ではソロの歌曲になっています。それでは聞いてください」。
  → 
 「 ア イ ス キ ュ ロ ス の 断 片 か ら 」 ( D 4 5 0 )

 

 ・ 「 エ コ ー と ナ ル キ ッ ソ ス 」

ナレーション(アテーナー)「エコー、つまり“こだま”とナルキッソス、いわゆる“ナルシズム”の元祖にまつわるおハナシは、つぎの通りです。
河の神さまと水の精との間に生まれたナルキッソスは、生まれながらの美少年で、ほんの子供だった頃から、美しいかれに恋をする女性が数え切れないほどでした。かれはとても自信家でプライドが高かったので、十六才になった時には、かれにすげなくされた女の子ばかりか男の子まで、みんなかれを恨んでいました。その数え切れない恋人たちの一人に、山のニンフ(妖精)のエコーがいました。かの女はお喋りが過ぎたので、その罰として、山の女神から、相手のコトバをそのまま繰り返すことしか出来なくなる、という呪いをかけられてしまいました。ある日ナルキッソスが森へ狩りにでかけると、かの女はそっと後をつけて行きました。森の奥の泉のほとりまで来ると、かれは仲間とはぐれたことに気付いて、『だれかいないの、ここに?』、と叫びました。『ここに!』、とエコーは言いました。『じゃ、出ておいで!』。『出ておいで!』。『どうして逃げるの?』。『どうして逃げるの?』。『嫌わないで!』。『嫌わないで!』。『仲好くなろう』。『仲好くなろう』。エコーは喜んで姿を現わして、かれに抱きつこうとしました。しかしかれは手荒くはねのけて言いました。『死んだ方がましだよ、抱かれるより。さようなら』。『抱かれるより・・さようなら』。ナルキッソスが冷たくあしらって立ち去ったので、エコーは泣き崩れて、そのまま泉に身を投げて死んでしまいましたが、泣き声だけがいつまでも後に残りました。                

アルテミス「かの女の魂の訴えを聞いた私は、女性に冷たい自惚れ屋のナルキッソスに罰を与えることにしました。かれは次の日から、泉に映る自分自身の姿を見て恋いこがれるようになってしまったのです。かれは幾日も幾日も水に映った美しい少年に、腕をさしのべて抱いてくちづけしようとしました。それがどうしても不可能だと分かると、とうとうかれは『ああ、私の愛にこたえてくれない若者よ、さようなら』、と叫んで短刀を喉に突き立てて死にました。このかれの最後の言葉を、エコーは水の底で幾度も幾度も叫び続けました。ナルキッソスの血は土を真っ赤に染めましたが、その土からは赤い冠をつけた真っ白な水仙(ナルキッソス)が咲きだした、といわれています」。
Y・C・M「“シューベルトはホモだった”、という説をアメリカの学者が唱えていまして、賛否両論激しい論争が行われていることは、以前ご紹介したことがありますが、今回この『ギリシャ神話シリーズ』を取り上げるに当たって、百曲にのぼるシューベルトのギリシャ神話に題材を採った作品は、圧倒的に“男の歌”が多いことが分かりました。だから、この“ホモ説”もまんざら見当外れではないかも知れない、とさえ思ったのですが、この『エコー』をヒロインに選んだことを知った時、ああ、それならかれはけして女に冷たい男ではない、むしろあまりにも深く愛し過ぎたために、かえって当の女性にはその真意が伝わらなかった不幸な男といっていい、とタイトルだけ見て勝手に結 論を出していました。ところが、これにニッポン語の歌詞をつける段になって・・・」

アテーナー「おっと、それから先は歌を聞いて頂いてから、ということにしましょう。それでは歌ってください」。
 →
 「 エ コ ー 」 ( D 9 9 0 ー C )

アフロディーテー「自称“尊師”のこのY・C・Mも完全に一杯食わされましたネ。東洋の女神さまだったら、こんな時には『おシャカさまでも気が付かなかった』、と言うんでしょう?・・でも、コミカルでコケットリーにあふれた、ふつうシューベルトのあまり知られていない面を物語る傑作です。もっとこういう系統の歌がたくさん知られてもいいですね。どしどし紹介してくださいよ、Y・C・M」。
Y・C・M「OK!引き受けた・・シューベルトがホモだったかどうか、この結論は残念ながら先へ持越しということに致しましょう」。
アテーナー「今回は時間の関係でご紹介できる曲はここまでですが、後半のパーテイーの席で、この恋と芸術の女神・アフロディーテーさんに捧げた軽やかで明るい歌を、いくつも聞いて頂くことができるでしょう。ご静聴ありがとうございました」。

  全 員 一 礼 し て 幕 。→17:40  食卓の用意、来賓の挨拶に続いてバイキング形式のパーテイーを開始。18:00 からTafelmusik(テーブルミュージック)の形で、残る数曲の歌をパーティーの雰囲気の中へ溶け込ませつつ披露する。その後は“カラオケ”のノリで歌いたい人が勝手に歌うコーナーを設ける。最後に“酒盛りの歌”をみんなで歌っておひらきとする。20:00 終了。


 


 「 恋する神々とシューベルト ・                       幕 間 狂 言 」パート3
                                               96・5・18&7・7用  

                                                      Y・C・M作成 

◇ カ ル ト ク イ ズ ・ 女 神 の 神 獣 た ち(96・5・18開催)

1)次のモノのうちギリシャ語起源でないのはどれでしょう?

@電力(エレクトリシティー) A水力(ハイドローリク) Bアルコール C原子力(アトミック・エナジー)

2)次の元素記号のうちギリシャ語がもとになっていないのはどれでしょう。

@H(水素) AMg(マグネシウム) BK(カリウム) CNe(ネオン)

3)ウズラは女神・アルテミス(ダイアナ)の神鳥とされていますが、その理由は次のどれでしょう?                                  

@鳴き声が勇ましいので、戦いの鬨(とき)の声を表わすものとされた。
A歩く姿がエロチックなので、性の解放の祭りに巫女たちが真似て踊った。
B夫婦の仲がよいので、おめでたい鳥とされていた。
C処女生殖で卵を生むので、処女の女神の象徴とされていた。
 
「ウズラのさえずり」(D742)

4)古典時代のギリシャでは“結婚と出産の女神”だったヘラは、もともと大女神として様々な神獣をもっていました。次のうちでまるで関係ないのが一つだけあります。どれでしょう?
@ナイチンゲール A孔雀  Bおしどり(鴛鴦) Cカッコウ(郭公)
 
ナイチンゲールに寄せて」(D497)

5)シューベルトの「白鳥の歌(D744)」は、次の作品のどれか一つを題材にしたものです。選んでください。                            

@ホメロスの「イーリアス」 Aアンデルセンの「みにくいアヒルの子」 B中世伝説の「白鳥の騎士・ローエングリン」 Cイソップの寓話
 
白鳥の歌

6)「恋を運ぶ使い」の役を果たす鳩は、女神アフロディーテー(ビーナス)の神鳥ですが、現代の男性には好まれる“巨乳”は、昔のニッポンでは“鳩胸”といって嫌われたそうです。もう一つ嫌われたのはどれでしょう?
@大根足 A馬面 B出っ尻 C出っ腹
 
鳩の使い」(D957ー14)、「命のメロディー」(D395)]は→7/7へ

7)知恵と武勇の女神アテーナー(ミネルバ)の神鳥はカラスとフクロウです。では「ミネルバのフクロウは夕暮れになると飛びはじめる」、といって文明の終末を予告したのは誰でしょう?
@ソクラテス Aヘーゲル Bカント Cノストラダムス
 
カラス」(D911ー15)

8)つぎの“エコー”のつくコトバのうちで、本来の“こだま”という意味をもっているのはどれでしょう?
@エコロジー Aエコセーズ Bエコノミック・アニマル Cエコラリア
 
エコー」(D990ーC)

9)アポロンに追われて月桂樹に変身したダフネ(ダポイネー)、この名前の意味は次のどれでしょう?
@水死体 A水に住む蛇 B血に飢えた女 C月桂樹の精            
 
小川のほとりのダフネ」(D411)

10)次のコトバのうち“羊飼いの神・パーン”に関係があるのはどれでしょう?
@フライパン Aパンケーキ Bパニック Cパンスペルミア説
 
「岩の上の羊飼い」(D965)

 

◇ カ ル ト ク イ ズ ・ 星 座 と 星 の 物 語(96・7・7開催)
     Y ・ C ・ M  作 成

1)シューベルトが生涯でただ一人「魅惑の星」と呼んだのは、次のうちどの女性でしょう?
@テレーゼ・グロープ Aアンナ・ミルダー Bレオポルディーネ・パハラー
Cカロリーネ・エステルハーチー
 
「恋人はそばに」(D162)

2)次の星のうちでギリシャ神話に関係があるのはどれでしょう?
@ダビデの星 Aベツレヘムの星 B蛇使い座 C星飛雄馬
 
「星」(D939)

3)銀河(天の川)のことを英語ではミルキーウェイ、ドイツ語ではミルヒシュトラーセといいます。そのわけは何でしょう?
@牛乳を流したような形だから。

A巨乳から流れ出るミルクのようだから。                     

B甘いお菓子のような形だから。 

C甘い眠りを誘う忘却の河だから。
 
「岸辺にて」(D746)

4)七夕(たなばた)の起源になる「牽牛」と「織女」は、ギリャ神話では何の星になるでしょう?
@鷲座の主星「アルタイル」と琴座の「ベガ」
A大犬座のシリウスと白鳥座のX1
B大熊座の北斗七星と小熊座のα
C牡牛座のイオとエウローペ
 
命のメロディー」(D395)

5)「星なら誰もほしがらない」、この一節は誰の詩の中にあるでしょうか?
@シェイクスピア Aホメロス Bハイネ Cゲーテ
 
「涙の中の慰め」(D120)

6)アルテミスが全裸で沐浴している姿を見たために、牡鹿に変えられて狩りの獲物にされてしまった狩人のアクタイオンは、実はオリオンと同一人物です。ところでオリオン星座の三つ星の下にあるのはどの星でしょう?                   

@狼星(シリウス) A北極星 B南十字星 Cスバル(昴)
 
怒れるディアナに」(D707)

7)次のお話のうちでギリシャに関係ないのはどれでしょう?
@セーラームーン Aウサギとカメ B狼と少年 C銀河鉄道の夜
 
「旅人の月に寄せる歌」(D870)

8)次の日本神話とギリシャ神話のペアーのうちで、噛み合っていないハナシがあります。それはどれでしょう?
@オルペウスとイザナギノミコト Aアリアドネとクシナダヒメ B双子星と海幸彦・山幸彦 Cヤマタノオロチとヒドラ
 
「ディオスクーロイに寄せる船人の歌」(D360)

9)ヘルメスは商業と盗人の神さまですが、そのローマ名で呼ばれている金属があります。
 。それはどれでしょう?
@プラチナ Aダイヤモンド B水銀 C水晶
 
「盗賊の歌」(D435ー13)
  
10)トロイア戦争の時に、エチオピアからトロイア救援にかけつけた英雄メムノンは、暁の女神エーオースまたはアウローラ(オーロラ)の息子です。この女神は「明けの明星 」をあらわしてもいますが、それはビーナスの惑星である「金星」を指すものです。ところでこの「金星」のギリシャ語“フォースフォロス”は、次のどの物質に当たるでしょう?
@黄金 A燐 B白銀 Cサリン
 
「メムノン」(D541)                         

11)およそ二万五千年を一年とする「プラトン年」というものがあり、それに従うと21世紀からの二千年(プラトン月)は、「魚座」から次の星座に移る時代とされています。それはどの星座でしょう?
@牡羊座 A乙女座 Bサソリ座 C水瓶座
 
ガニメート」(D544)

12)牡羊座は人を助けた褒美に金色の毛皮をもらった羊の星座です。ではこの“金羊毛皮”
 ”を、ギリシャの英雄たちがアルゴ船で採りに行った場所は現在のどこでしょう?
@キプロス島 Aクリミア半島 Bグルジア共和国 C北極圏
 
「岩の上の羊飼い」(D965)

 

 5 / 1 8 ・ 出 演 者

 ・ナレーション :田口晶子、横部彰子
 ・歌(ソプラノ):諸岡智子・ほか1(島村朗)
 ・ピアノ    :山田暁子
 ・クラリネット :格和千恵

               曲 目
 ■・「ウズラのさえずり」(D742)
 ■・「
ナイチンゲールに寄せて」(D497)
 ■・「
白鳥の歌」(D744)*詩の朗読とクラリネット、ピアノ演奏
 ■・「鳩の使い」(D957ー14)
 ■・「
命のメロディー」(D395)*カット
 ■・「カラス」(D911ー15)
 ■・「
エコー」(D990ーC)
 ■・「小川のほとりのダフネ」(D411)
 ■・「岩の上の羊飼い」(D965)

 

    7 / 7 ・ 出 演 者
 ・ナレーション :田口晶子 横部彰子
 ・歌      :諸岡 智子、後閑ゆかり、小林昌代
 ・ピアノ    :角田恭子
 ・クラリネット :格和千恵

             曲 目 配 当
 @・「恋人はそばに」(D162)      諸岡智子
 A・「星」(D939)           小林昌代
 B・「岸辺にて」(D746)        後閑ゆかり、小林昌代
 C・「
命のメロディー」(D395)     諸岡智子、後閑ゆかり、小林昌代
 D・「涙の中の慰め」(D120)      諸岡智子
 E・「
怒れるディアナに」(D707)    小林昌代
 F・「旅人の月に寄せる歌」(D870)   後閑ゆかり
 G・「ディオスクーロイに寄せる船人の歌」(D360) 小林昌代
 H・「盗賊の歌」(D435ー13)     四重唱(S・S・Cl・A)
 I・「メムノン」(D541)        小林昌代
 J・「
ガニメート」(D544)       諸岡智子
 K・「岩の上の羊飼い」(D965)     後閑ゆかり
 以上。
                                  

    

      ア ル テ ミ ス と 二 人 の 狩 人

「月と狩りと処女の女神・アルテミス」には、オリオンとアクタイオンという二人の狩人の恋人がありました。いいえ、名前は二つあっても、実は二人とも同一人物なのだ、という説を唱える人さえあります。それは何故かといいますと、どちらも狩人として活躍し、かの女のハートを射止めることに成功しながら、最後はかの女の手にかかって非業の死を遂げているからです。
 オリオンは海の神・ポセイドンと人間の母親との間に生まれた息子で、類い希な美男子として知られる狩人でした。父親はかれに海の底を渡り歩く力を授けました。キオスの王・オイノピオンの王女・メロペーに一目惚れしたかれは、その島の野獣を狩り尽して 獲物を贈物にして求婚しました。けれども、オイノピオンが返事を延ばしてばかりいるので、オリオンは腕ずくでメロペーを自分のものにしようとしました。これに腹を立てた父親の国王は、かれに酒を飲ませて眠っているスキに目を潰して、海辺に放り出してしまいました。盲目になったオリオンは、一つ目の巨人の槌の響きをたよりに、レムノスの島へ着き、ヘーパイストスの鍛治場へ行きました。ヘーパイストスは職人を伴につけて、ヘリオスの宮殿へ案内しました。東の方へ進んで行くと、暁の神・エーオースに直接出会って恋人となり、かの女の輝きでやっとまた視力を取り戻すことができました。かの女と連れ立ってデロス島を訪れたあと、オリオンは復讐をしようと、オイノピオンの所へ戻りましたが、キオス島のどこを探しても見付かりませんでした。オイノピオンはヘーパイストスの作った地下室に隠れていたからです。ひょっとしたら祖父のミノスの所にかくまわれているかも知れない、と思ったオリオンは、さらに海を渡ってクレタ島まで行くと、そこでかれと同じくらい狩りの好きな女神・アルテミスに出会いました。かの女は「そんな復讐のことなど忘れて、私と一緒に毎日狩りをしてここで楽しく暮らしましょう」、と言いました。しばらく一緒に暮らすうちに、二人は結婚してもいいと思うようになり、そのウワサが立ち初めました。アルテミスの兄のアポロンは、この結婚には猛反対で、なんとかして邪魔してやろうと策をめぐらせました。ある日オリオンが海の沖で頭だけ出して泳いでいると、アポロンは岸壁の上からアルテミスと一緒に眺めながらこう言いました。「あれはカンダオンという悪名高い怪獣で、島じゅうの乙女をさらって餌食にするとんでもない奴だ。おまえの銀の弓で退治してもらいたい」。アルテミスは二つ返事で弓に矢をつがえると、渾身の力をふりしぼって矢を放ちました。見事に命中したので、二人は浜辺に出て祝杯を上げました。何日か経ってオリオンの死体が浜辺に打ち上げられると、アルテミスは恋人の遺骸のそばで泣き明かし、最後にかれを天空に投げ上げて星座にしてやりました。これが今も空に輝くオリオン座だと 言われています。かれはライオンの毛皮を着て、腰帯に棍棒をさして弓を持ち、猟犬のシリウスを従えています。オリオンの三つ星の斜め下に輝く、全天で一番明るい星、それがシリウスです。
 カドモス王の息子のアクタイオンは、これもまた有名な狩人で、毎日野山を駆けめぐっては、鳥や獣を剛弓の餌食にして楽しんでいました。ある日かれが糸杉と松の樹に囲ま れた谷間で、狩りの仲間たちとはぐれて一人歩いて行くと、狩りの女神・アルテミスを 祭った祠があり、その奥からは大勢の若い女たちの水浴びをする音と、甲高い笑い声が聞こえて来ました。アクタイオンは好奇心にかられて、太い樹の幹の影に隠れてそっと奥を覗いてみました。奥にはこの世のものとも思えないほど美しい泉があって、そこで大勢のニンフたちが、水浴びをしながら笑いさざめき合っていたのでした。かの女たちの真ん中に、ひときわ背の高い美女が一人いて、かの女が立ち上がるとその全裸の姿は光り輝く宝石のようで、それを一目見たアクタイオンは、これこそ正真正銘の女神アルテミスだ、と確信しました。ニンフたちはだれ一人として、見られていることには気付 きませんでしたが、透視能力をそなえた女神だけは、樹の幹の影に隠れた男の姿をはっきりととらえました。かの女は多くの鳥や獣を殺した後で、袞々とわき出る清水で身体を洗い浄めるのがならわしで、この時も地面の上に狩りの獲物を寝かせ、銀の弓と矢は身にまとっていた衣服と一緒に大きな石の上に置いていました。「誰か覗いていますよ。しかも人間の男のようです」、という女神の叫び声を聞くと、ニンフたちは一斉に金切り声をあげ、人の輪を作って女神の姿を隠そうとしました。「そんなことをしてもムダです。かれの瞼の裏には、この私の全身の赤裸々な姿がしっかりと焼き付いてしまったのですから・・もうオシマイね」。羞恥と怒りで真っ赤になった女神は、アクタイオンに向かって呪いのことばを浴びせかけました。「さあ、これから仲間たちの所へもどって、見たとおりのことを話すがいい。アルテミスの全裸の姿をこの目で見たってネ・ ・もしも口がきけるものならだけど」。女神がこう言い終わるが早いか、アクタイオンの身体が突然変身を始めました。先ず枝のついた一対の牡鹿の角がかれの頭に生えはじめ、顎がずんずん伸びて、その上耳が尖り出しました。手が足の爪先に変わり、腕は長い両足になり、身体中が斑の毛皮に覆われてしまいました。びっくり仰天して逃げ出したかれに向かって、泉から上がった女神は、石の上に置いてあった銀の弓と矢を取ると、渾身の力をふるって弦を引き絞り、一気に矢を放ちました。矢は狙いどおりに、牡鹿に変わったアクタイオンの心臓を射抜きました。流れる血潮にまみれながら、かれの顔はそれでも恍惚の表情を浮かべていました。生涯にただ一度、ほんとうの女神の生まれたままの姿を瞼の裏に焼き付けたかれは、やがて目を閉じて息を引取りましたが、その死に顔は天国のような幸せに満たされていました。

→「怒れるデイアナに

 

  金 色 の 羊 の 毛 皮

 北部ギリシャのテッサリア地方は、もとは国王のアタマースと王妃のネペレーが治めていました。二人の間には男の子と女の子がありましたが、次第に夫婦の間は冷えきって来たので、国王は王妃を離縁して、よその国の王女を後妻に迎えようとしました。王妃のネペレーは、継母が来れば二人の子供たちは虐待されるにちがいない、と思ったので 、子供たちを逸早く避難させる決心をして、離婚すると同時に二人の子供を金色の毛の生えた羊の背中に乗せて、国外へ脱出させました。この羊は羊飼いの神さまパーンから超能力を授かっていたので、空を自由に飛ぶことができました。羊は二人の子供を背中に乗せたまま、今のダーダネルス海峡を越えて、黒海沿岸の国・コルキスを目指して飛び続けましたが、黒海に出る直前に二人のうちのヘレという女の子だけが、うっかり手を放したために振り落とされてしまいました。ここがちょうどヨーロッパとアジアを分ける場所で、王女が落ちた海はヘレスポントスと呼ばれるようになりました。羊は王子のプリクソスを一人乗せてなおも飛びつづけて、とうとう黒海の東海岸にあるコルキスまでたどり着きました。プリクソスはコルキスの王さまから手厚くもてなされました。羊はついに力つきて倒れて死にましたが、プリクソスは自分の命の恩人として手厚く葬り、金色の毛皮は記念として神さまに捧げることにしました。コルキスの王・アイエーテースは、この毛皮を神社の森の中に隠して、一頭の火を噴く龍に寝ずの番をさせて守らせました。
 テッサリアにはアタマースの王国の隣にもう一つの国があり、そこの国王のアイソンは 、年をとってから王位をまだ子供だった王子のイアソンにゆずるために、弟のペリアスに、イアソンが成人するまでの間中継ぎの王さまになってほしい、と頼みました。ペリアスは二つ返事で承諾しましたが、いざイアソンが成人すると、王位を渡す条件として、コルキスに国宝として祭られている“金色の羊の毛皮”を取ってくることを命じました。かれの本心はいうまでもなく、一旦手に入れた王位をむざむざ甥に奪われたくない、ということにありました。しかしイアソンは、生まれ