シューベルト歌曲集「白鳥の歌」
日本語で歌える邦詩


このページは、国際フランツ・シューベルト協会が作成した、
シューベルト歌曲の日本語歌詞を掲載しています。
原詩の翻訳とは違って、この邦詩はメロディーに合わせて歌えるように作られています。

歌曲集「白鳥の歌」の解説はこちら


全曲一覧
1.恋の使い
2.戦士の予感
3.春の憧れ
4.セレナーデ
5.わが住処
6.はるかな地で
7.別れ
8.アトラス
9.かの女の肖像
10.漁師の娘
11.都市
12.海辺で
13.ドッペルゲンガー(生き霊)
14.鳩の使い


第1曲
「恋の使い」
(Liebesbotschaft)

L・レルシュタープ詩
實吉晴夫邦詩
G(ト長調)、2/4拍子、75小節。
Ziemlich langsam (ややゆっくり)

(前奏5小節)
銀色に光る小川 あの娘(こ)の家に急ぐ
おまえは僕の使い 便りを届けてくれ
庭に咲いた草花は あの娘(こ)の胸の粧い
真紅に燃えるバラの花を 涼しい流れに浸そうよ
真紅に燃えるバラの花を 小川の流れで咲かそうよ

岸であの娘(こ)がまどろみに 僕を想って沈めば
やさしく慰めてくれよ 僕はすぐに帰ると
やさしく慰めてくれ 僕はすぐに帰るから
(間奏3小節)
赤い夕陽が沈めば あの娘(こ)の子守り歌
せせらぎを聞かせてやれ 恋の夢を見せろ
恋の夢を見せてやれ
(後奏4小節)」


第2曲
「戦士の予感」
(Kriegers Ahnung)

L・レルシュタープ詩
實吉晴夫邦詩
c(ハ短調)、3/4拍子、122小節。

「(前奏8小節)
周りを囲む戦(いくさ)の仲間
胸が重くなる
戦(いくさ)のただ中にいても
焦がれる心
(間奏3小節)
(ここから4拍子、やや早めて)
幾度も夢に見たあの娘(こ)の胸
あの娘の胸
炉端に火が燃えて
腕の中に眠るあの娘
(間奏1小節)
かがり火が燃えて
武器を照らす
独り寝になれて
寂しさに耐えて
涙に袖を濡らす
袖を濡らす
(間奏3小節)
(ここから6/8拍子、急いで、不安気に)
おお、希望を捨てるな
いつかまた逢える
戦い抜け
(間奏1小節)
やがて私も安らかに眠る
君もお休み
君もお休み!
おお、希望を捨てるな
いつかまた逢える
戦い抜け
やがて私もやすらかに眠る
君もお休み
君もお休み
(もとのテンポに戻って)
君もお休み!」


第3曲
「春の憧れ」
(Frühlingssehnensucht)

L・レルシュタープ詩
實吉晴夫邦詩

やわらかなそよ風 花の香もただよう
やわらかなそよ風が 花の香をただよわせ
身も心もなごませる 希望に胸をはずませる 
風の道をどこまでも 香(かおり)を追って進もうよ 
でも、どこへ?

せせらぎが聞こえる 谷底へ下ろう
せせらぎは絶え間なく 谷間まで続いてる
浮く波も足を速め 水に映る青い空
何が胸を惹きつける 谷底には何がある
下へ、下へ?

黄金(こがね)の陽(ひ)の光 喜びを知らせる
黄金の陽の光を 惜しみなく注がれて
幸せを約束する やさしく微笑みながら
嬉し涙を誘われ 思わず頬を濡らした
何故かしら?

緑に囲まれて 輝く花吹雪
山と森に囲まれ 白く光る花ばな
何もかも初日を浴びて つぼみも芽も顔を出す
命の芽を吹き出して すべて願いはかなった
さて、君は?

満たされぬ憧れ 涙はとめどなく
満たされぬ憧れを いつも泣いてごまかす
求めるのはただ一つ 飢えと渇きを鎮める
君のやさしい微笑み それこそほんとうの春
君だけが・・。


第4曲
「セレナーデ」
(Ständchen)

L・レルシュタープ詩
d(ニ短調)、3/4拍子、50小節。
Mässig(ほどよいテンポで)。

人気(ひとけ)ない真夜中に、きみを呼ぶ
静かな町角に出ておいで!
ささやく梢に月の光、月の光
人に見られても、気にはするな、気にはするな!

ナイチンゲールの鳴く声も、きみを呼ぶ
やるせないこの恋を歌ってる
鳥も知っている恋の悩み、胸の痛み
銀色の声で胸をゆすり、ハートを刺す

心があるなら聞いてくれ!
震えて待つぼくを、迎えてくれ、迎えてくれ!
やさしく



第5曲
「わが住処」
(Aufenthalt)

L・レルシュタープ詩
實吉晴夫邦詩

荒波、うなる森、
岩場がわが住処
荒波が、うなる森が、
岩肌がわが住処

重なる波のように、
絶え間なく押し寄せる
わが涙
尽きることなく
絶え間なくあふれてる

森の樹をゆるがせる
吹きすさぶ風のように
心に隙間風が
絶え間なく吹いて来る
心の寒い夜風が

むき出しの岩肌は
とこしえに変わらぬ
苦しみだ
時を経てもいつまでも
変わらない

荒波、うなる森
岩肌がわが住処
荒波が、うなる森が
岩肌が、
荒波とうなる森が
わが住処



第6曲
「はるかな地で」
(In der Ferne)

L・レルシュタープ詩
實吉晴夫邦詩

世を捨てて逃げる人は 
異国をまわり国を忘れ
親を憎み 友を捨てて 
幸せにはめぐりあわないで 滅ぶばかり

恋にやつれ目には涙 つきぬ思い
故郷は遠く胸に秘めて
愚痴も言わず 星を見上げ
希望もむなしく 倒れるばかり

そよぐ風に波が立てば
日の光がつかの間かがやく
でも光は すぐに消えた
世捨て人の心からの挨拶をおくろう

そよぐ風に波がたてば
日の光がつかのま差して
すぐに消えて 傷を残した
心をこめた別れのことば
挨拶をおくろう



第7曲
「別れ」
(Abschied)

L・レルシュタープ詩
實吉晴夫邦詩

さらば! 明るい街角 さらば!
馬はひづめ打ち鳴らし 最後の合図を待っている
悲しい顔はみせない
別れるときも同じだ 別れる時も同じだ
さらば 明るい町角 さらば!

さらば 庭木の緑よ さらば!
川に沿って馬を飛ばし
別れのうたをくちづさむ
悲しい歌は歌わない
別れるときも歌わない
別れるときも同じだ さらば
緑の庭木よ さらば!

さらば やさしいギャルたちよ さらば!
花の香りがただよう 家の窓から見送る
いつものように手をふるが
まわれ右はしないぞ 二度と戻りはしない
さらば やさしいギャルたちよ さらば!

さらば 夕日も沈むとき さらば!
金色の星がまたたく
夜空の星に導かれ この世の果てを旅する
行く手を照らす 守り神 
行く手を照らす 守り神 さらば!
さらば! 夕日は沈んでゆく さらば!

さらば! 窓辺のあかりよ さらば!
人恋しく照る光たち 夜人を待っている
でも今日は寄らずに行こう
たとえ今日が最後の別れの日と決まっても
さらば 窓辺のあかりよ

さらば 星たちよさらば さらば
窓のほのかなあかりが 星のかわりをしてくれる
ここで休ことはできない ついてきても ムダだ 
ここで休めはしない ついてきても ムダだ
さらば 星たちよ さらば!



第8曲
「アトラス」
(Der Atlas)

H・ハイネ詩
實吉晴夫邦詩

かわいそうなアトラス
かわいそうなアトラス
この世のすべての苦しみを
ひとりで担うのだ
背負いきれなくて
胸が押しつぶされても

自ら選んだ道だ
はかりしれぬ愛を求め
はかり知れない不幸に落ちる
みずからまいた種だ
かわいそうなアトラス
かわいそうなアトラス
この世の苦しみをひとり担っていこう
この世のすべての罪を!



第9曲
「かの女の肖像」
(Ihr Bild)

H・ハイネ詩
實吉晴夫邦詩

夢にみたあの娘の絵すがたが
いつの間にやら 命を受けて

口もとに ほほえみ浮かべた
二つのひとみに涙が光る

ぼくの目にも涙が浮かぶ
信じられないよ 君がいないなんて!



第10曲
「漁師の娘」
(Der Fischermädchen)

H・ハイネ詩
實吉晴夫邦詩

美しい娘 小舟を捨て
私のそばへ来て 手に手をとろうよ
そこに腰を下ろして
手に手を取ろうよ
ふたりは幸せ

顔を胸に当てて抱きしめれば
荒い海よりもずっと楽だろう
荒い海に毎日もまれている君
ここでやすめよ

この心も海と同じだ
嵐も津波も避けられないけれど
深い海の底に真珠が眠る
真珠が眠る



第11曲
「都市」
(Die Stadt)

H・ハイネ詩
實吉晴夫邦詩

遠くの隅に 霧にかすんで
町の姿が現れてきた

なまぬるい風 灰色の水路
かなしげに進む船の船頭

ふたたび 夕日が姿を見せた
照らし出される別れの現場



第12曲
「海辺で」
(Am Meer)

H・ハイネ詩
實吉晴夫邦詩

海の沖の方まで夕映えに照らされて
二人は漁師の小屋に黙って座りこんだ

濃い霧 上げ潮 カモメが群れ飛ぶ
君の目からあふれる涙がこぼれて

君の手をぬらした 私はひざまずいて
君の白い手から涙をすすった

あれ以来 やせ細り 死ぬほど焦がれる
あの哀れな女が 涙で毒を盛ったのだ



第13曲
「ドッペルゲンガー(生き霊)」
(Der Doppelgänger)

H・ハイネ詩
實吉晴夫邦詩

夜更けの 町は静か
この家に住んでいたあの娘は
とうの昔 去って
同じ場所に残る家

人のいる空を見つめて
手を握り 苦しそう
寒気が身体を襲う
月明かりに私の顔

生き霊よ 青い鬼よ!
なぜこの私の昔の苦い恋を
もう一度繰り返すか?



第14曲
「鳩の使い」
(Die Taubenpost)

J・G・ザイドル詩
實吉晴夫邦詩

鳩を一羽飼っていた 私に忠実な
わき目もふらずに 飛んでってくれた
数え切れぬほど 何度も飛ばした
目指すあの窓へ あの娘(こ)の家に
あの娘(こ)の家に

あの娘(こ)の窓の下で 姿に見とれ
私の挨拶を 伝えてくれた
便りはもうおしまい 残るは涙
おまえの役目は もうおしまいだ
もうおしまいだ

夜も昼も休まず 飛び続ける
それだけが鳩の 生きがいだった
疲れも知らずに 飛び続ける
餌もほしがらず 忠実な鳩
忠実な鳩!

この胸に抱きしめて キスしてやりたい
その名前、分かる?
恋を運ぶ使いの 名はあこがれ

この胸に抱きしめて キスしてやりたい
その名前、分かる?
恋を運ぶ使いの 名はあこがれ






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