「リューシストラテー」ーストーリーと時代背景ー

アリストパネース原作 Y・C・M要約

あらすじ:

古代ギリシャのアテネ市内。アクロポリスの神殿に通ずる正門の前に、美しい若妻・リューシストラテーが立って、イライラしながら集会に参加する女性たちを待っています。かの女は夫がスパルタとの戦争に行ったきりもう何年も帰って来ないので、同じ立場の市民の女性を集めてある計画を提案しようとしているのです。ほどなく同じ市民の女性たちが三々五々集まってくるので、かの女が口を切って”待つ身のつらさ”を散々嘆いた後、「私にいい考えがあります。この計画が成功すれば、まもなく戦争から戻る男たちは、もう二度と戦争には行かないと約束するでしょう」、といいます。「そんないい方法があるの?」、とみんなが興味を示し始めると、そこへスパルタから舟に乗って、やはり夫に何年も留守にされて悩んでいるスパルタ人女性たちもやってきて、かの女の提案をうながします。リューシストラテーは、「男同士は敵味方に別れて戦争をしていても、私たち女同士はぜひ連帯して一緒に戦いましょう。敵は男どもです。かれらを打ち負かすことができれば、愛と平和の勝利は私たちのものですから」、といいました。「いったい何をするの?」、と一斉に質問の矢が浴びせられると、かの女は落ち着き払ってこう言います。「かれらが”もう二度と戦争には行かない”と誓うまでは、セックスはもちろんキスもフェラも一切してやらない、と私たち女性全員が処女の守り神・アテーナーの前で誓いを立てるのです」。「でも力ずくで、ムリヤリにされたらどうするの?」。「私たちが一切反応を示さなければ、ムリヤリやっても何の喜びもないことは、男どもだってわかるハズです。石像みたいに動かなければ、どんな男だってつまらなくなって、結局はあきらめてしまうでしょう」。「でもそれじゃ私たちだってつまらないわ」。「毎日一緒に暮らしていて、それでも拒否しろというのは、どう考えてもムリじゃないかしら」。「それならいっそ別れて暮らせばいいでしょう」、とリューシストラテー。「子どもたちの面倒は誰が見るの?」。「家事・炊事・掃除・洗濯は?」。「大部分は召し使いの仕事。足りない分は男どもにさせればいいでしょう」。「私たちはどこに住むの?」。「あそこです!」、とかの女はアクロポリスの丘にそびえる神殿を指差しました。

参詣するフリをしながら山の上に立つ神殿にたどり着いたかの女たちは、警備のオッサンたちを実力で追い払い、守護神・アテーナーの前で誓いの儀式をすませると、閂で神殿の扉をすべて閉じ、通報を受けて飛んで来た警官たちを、樽や水がめに満たした汚水を滝のように浴びせかけて撃退してしまいます。神殿の奥には、”戦費”として貯えられた莫大な金貨が保管されていたので、これを押さえているかぎり、役人たちもオイソレとは手が出せません。こうして何日にも及ぶ篭城が続くうちに、そろそろ家が恋しくなった何人かが、いいわけを考えては抜け出そうとしますが、リューシストラテーは一人一人を「ここでくじけたらおしまいです。私たちの目的は、私たち女性の愛と優しさがどんなに必要か、ということを男どもに思い知らせてやることなのですから、もう少しの辛抱です。一緒にがんばりましょう」、といって説得します。立てこもっている女性の一人・ミュリネーの復員して来た夫が、子どもを連れて丘を上って来て、必死になって妻に「帰って来てくれえ」と呼びかけますが、妻の方は相手にしません。夜中になると子どもたちは家に帰して、丘の上に夫が一人立って、身体を弓なりに反らせて求愛の叫びを上げると、ミュリネーがマットレスを抱えて出て来て夫の側へ寄り、今にもセックスに応じるフリをしながら、散々焦らせた末に身を翻して、また神殿の中へ駆け込んでしまいます。夫は泣きながらすごすごと丘を下りて帰宅します。

アテネの市議会の長老たちは、敵国であるスパルタの代表を招いて、互いに”女たちの反乱”に悩まされている窮状を打ち明け合った末、ついに休戦することで合意に達しました。この知らせはすぐに、アクロポリスに立てこもるリューシストラテーたちのもとに伝えられ、女性たちは一斉に勝利の歌を歌って乾杯と踊りを始めます。そしてこの勝利を守護神・アテーナーをはじめとして、美と愛の女神・アフロデイーテー(ビーナス)、それに処女と母性の守り神・アルテミス(ダイアナ)にも報告すると、この三体の神格にいけにえの動物を捧げて感謝の儀式を執り行いました。こうしてたとえ束の間とはいえ、同じギリシャ人同士が殺し合って人的資源を浪費するだけの戦争、アテネとスパルタの間の「ペロポンネソス戦争」はひとまず終わりを告げて、市民の間に平和の時が、そして夫婦や恋人同士の間には愛の時が訪れたのでした。









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