古代北インドの統一王朝で、4〜5世紀にインド史の黄金時代を築く。
〔時代〕 320頃〜550頃
〔地域〕 北インド
〔首都〕 パータリプトラ
〔特色〕 ヒンドゥー古典文化の完成
〔名君〕 チャンドラグプタ1世、チャンドラグプタ2世
〔経済〕 農耕経済
〔文化〕 グプタ美術、ヒンドゥー教、アジャンター石窟寺院
クシャーナ朝衰退後マガダ地方(現ビハール州南部)から興る。
- 320〜335頃 初代王
チャンドラグプタ1世
- 320年、ガンジス中流域の覇権を握って即位。
名家リッチャヴィー家と婚姻関係を結んで「諸王中の大王(マハーラージャ・アディラージャ)」と称し、ガンジス川中流域に勢力を拡大。
- 335〜376頃 第2代
サムドラグプタ
- ネパール、アッサム、南ベンガルなどガンジス上流域の周辺諸国を服属させて北インドを統一(アラハバード石碑)。
また、中央インドの丘陵の諸種族を服属させて帝国の範囲を拡大。さらに遠くデカン高原に兵を進めてカーンチーのパッラヴァ王を破る。
- 376〜414頃 第3代
チャンドラグプタ2世
- ウッジャインを根拠にし、ナガ朝や、ヴァーカータカ朝(主派)のルドラセーナ2世らと結び、サカ朝の西クシャトラパを駆逐して、アラビア海に達した。またベンガルとシンドを併合 → ベンガル(東)、サウラーシュトラ(西)、ネパール国境(北)、ナルマダ川(南)に及ぶ大帝国が完成。影響力はデカン方面にも及び、帝国の最盛期。
- 414頃〜?頃 第4代
クマーラグプタ1世
- 引き続き繁栄を維持。大乗仏教の僧院、ナーランダ伽藍を建立。
<政治>
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<社会>
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- 国王による専制支配……中央官制・軍制も完備、中央集権的統治であって、封建的支配ではない。
- 村落単位の行政単位……村落(グラーマ)→郡(ヴィシャヤ)→県(ブクティ)
- 郡統制機関ヴィシャヤアディカラナ((裁判等社会秩序を統制)に農民・市民を参加させることで村落、都市を把握。
- 但し帝国の実態は小王国の連合という側面が強く、周辺では絶え間ない戦いと合従連衡が繰り返され、帝国の国境線は絶えず揺れ動いた。
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当時のグプタ朝社会は法顕(Fa
Hien)の旅行記などで明らかに。
- バラモン僧(ブラーフマナ)は尊敬されたが、カースト制度はそのまま行われたわけではない。
- 土地所有農民(クトゥビン)が社会の中核(主な担税者)。
- 都市には組合(ナイガマ)が多数あり、商工業者は@交易商人、A高利貸し、B手工業者の三種があった。
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<経済>
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<文化>
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農業主体。
主たる担税者は農民。
農村では貨幣経済はあまり普及せず、現物経済中心。
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インド古典文化が大成。ヒンドゥー教、バラモン教、大乗仏教が同時に栄え、人文・科学も発達。
ヒンドゥー文化が豊かな実りを見せる。歴代王はヒンドゥー教を奉じ、サンスクリットが公用語となった。
- アラハバード石碑文……詩人王サムドラグプタを讃えたハリセーナの詩が刻まれる
- 詩聖カーリダーサの傑作『シャクンタラー』
- 『マハーバーラタ』の読誦(どくじゅ)普及
- 『マヌ法典』
- 『ヤージュニャヴァルキャ法典』
- 『ナーラダ法典』……司法規定中心
- バラモン教のヴェーダ学派成立
- ヒンドゥー教発展……タントラ教、シャークタ教義発達
- ヒンドゥー美術……アジャンター石窟寺院等のグプタ美術
他方で仏教文化も幅広く展開された。
- アサンガ(無著)、ヴァスバンドゥー(世親)兄弟の唯識教学
- ナーランダ伽藍
- 教典等のサンスクリット訳
- 密教成立……ヒンドゥー民間信仰からの影響
学問も文法、数学、天文学、薬学などが発達。
- Aryabhatta……インド最初の大天文学者
- 『カーマスートラ(Kamasutra)』……性愛の研究書
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5世紀前半〜
- クマーラグプタ1世晩年より「フーナ」(一般にはエフタルとされるが、クシャン族のキダーラ朝に比定する説もあり)が北西から侵入開始。
- スカンダグプタ
- クマーラグプタ1世の子。「フーナ」を破り、一時グプタ朝の栄光を回復する。
スカンダグプタの死後、10年間に3王が交替、勢力は衰える。
→ 次のような重大な結果を招く。
- エフタルの侵入
- マイトラカ朝や、グンデルカンド地方のパリヴァラージャカ、ウチャカルパ両王朝など、地方勢力の独立
- 6世紀初め
- 西はエフタルに蚕食され、要衝エーランも陥落。グプタ朝の支配権はヴァラナシ(現ベナレス)以東に限定。
- 6世紀前半
- エフタル王トラーマーナ、ミヒラクラが勢力を振るい、グプタ朝西方領土をさらに侵す。領土はビハールとベンガル北部のみに狭められる。
- 6世紀半ば
- 滅ぶ。
グプタ朝滅亡後、北インドは無数のヒンドゥー小王国に分裂し、その後イスラム勢力の侵入に至るまで、本当の意味で再統一されることはなかった。
→「シャクンタラー」へ
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