「糸紡ぎの女」

ゲーテ詩 Y・C・M邦詩

一人で糸を紡いでたら、スルスル糸が回る

突然きれいな若者が、私のそばに座った。

コトバを尽くして誉めちぎり、私を喜ばせた

亜麻色に光る髪の毛と、同じ色をした糸を。

黙って座っていはしない、タダではすまなくなった

とうとう糸はプツンと切れ、もとにはもう戻らない。

亜麻色の糸の塊は、まだまだ残りが一杯

ああ、でも私はもうできない、自慢の布は織れない。

お針子の所へ行った時、お腹で何か動いて

ハートはドキドキ脈を撃ち、早鐘のように鳴った。

ギラギラ日の射すお昼時、織れた布をさらそうと

ハアハア腰をかがめながら、ようやく池に着いた。

私があの小さな部屋で、紡いで仕上げたものが

とうとうこんなカタチになり、明るみに出てしまった。

 



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