2010年晩秋の例会

 

ピアノ連弾と「幻想」ソナタ

 

 

 

                 

 

ピアノ連弾のための アンダンティーノ変奏曲 D823−2

          ピアノ連弾のための ハンガリー風ディヴェルティスマン D818

 

演奏  大原 亜子 矢澤 一彦

 

ピアノ・ソナタ 第18番 ト長調 D894

              

演奏  大原 亜子

 

 

     20101128日(日)pm5:00開演4:30開場)

           会場:カルラ・ホール     参加費 3000

 

              

主催:国際フランツ・シューベルト協会  協賛:メタモル出版

 

            ディヴェルティメントとソナタ

 

大原、矢澤夫妻によるピアノ連弾シリーズも、はや3回を迎えた。現在の日本で、シューベルトの連弾曲を生で聴くことのできる至福は、協会の例会ならではのことだろう。
 憂愁に満ちたハンガリー風な主題が始まると、そこはすでに物語の世界への入り口、プリモとセコンドの運びが誘うように、私達をその世界に引きこんで行く。3楽章にも亘る大曲を貫く物語性は、連弾の迫力と、幅広い表現力によって見事に展開されて行く。いわばピアノによる交響詩のようにダイナミックに、それでいて抒情性豊かに。
 それにしても、連弾曲と言うものは、「聴く楽しみに勝る弾く楽しみ」ではないだろうか。終わった後の2人の微笑みを見て、思わずそんなことが思い浮かんだ。

そして、後半は、ト長調ソナタ。「幻想ソナタ」とも呼ばれるシューベルト中期のソナタの傑作。「幻想」と言う呼び名には意外なわけがありました。ソナタのばら売りを考えていた出版社が第1楽章に「幻想曲(Fantasie)」と付けたことから始まったそうだ。ハンガリー出身のピアニスト、アンドラーシュ・シフによれば、「幻想」に惑わされてはいけない、名前を付けるとしたら「舞曲」ソナタだと。確かに、このソナタには効果的に舞曲が使われていて、それがシューベルトらしい完成したソナタを魅力的に形創っているようだ。とすると、大原さんの今回の演奏は、その舞曲の部分の魅力にちょっと欠ける嫌いがあったのではないか。次回を楽しみにしたい。

 

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